悪戯するなら菓子をくれ
パンプキンパンプキン。
ジャックに憧れたがジャックには当然なれず、ブギーにもなれず、気付けばメイヤーになってしまっていた……
※ ※
いやはやお聞きください。
『プーと大人になった僕』を観たんですよォ。
いやもし、もし劇場で上映時間中ずっと目を真っ赤にして水分を垂れ流し、しつこく鼻水すすってた害悪野郎がいたとすれば、それは私なのです大変面目ない。上映時間中ずっと泣き続けたのはこれが初めてかもしれない。
卑怯でしょうあの、ぬいぐるみの様なデザインは。
的確に幼少期の――輝かしい日々を思い起こさせ、心臓を抉ってくる。
あのクリストファー・ロビンですら「勤労者」としての性(そして徴兵され他人を殺す立場に追いやられる「国民」としての性)から逃れられないという、考えてみれば至極当然の描写ですら心を握りつぶしにかかっていた。挙句単なる労働者だけでなく中間管理職としての苦悩まで描かれるともう逃げられない、将来(見込みは薄いが)管理職ポジションになった際の自分が再度観ても苦しめられるというオマケつきだ。
唯一涙が引っ込んだのは映画の終盤くらいか。
「何もしないこと」が大事なら終わりも何もしないでほしかったが、流石にそれは現実世界との折衷を見つけ出さざるを得ない悲哀。
とはいえ子供の頃の下らんお遊びと始末に負えない夢想を捨てて人は「成長せねばならない」というお決まりの説教で終わるよりは、良かった。
嗚呼、100エーカーの森は何処。
※ ※
最近になってどうしたことか、アガサクリスティーの「ポアロ」シリーズにはまりはじめた。
卵型の頭に特徴的な髭をつけた外国人の小人。ホットチョコレートが好きでもったいぶった話し方をする変人のオッサン。
その周りを彩るトーリー党気質の貴族たちとホイッグ党気質の若者たち、そして事件に秘められた謎。久方振りにむさぼるように読んだ。
推理小説の探偵は往々にして友達にはなりたくないタイプばかりで、ポアロもその一人に数えられるが――そのはずなのに、気付けばポアロの出てくる小説を見つけ出しては読みふける日々が続いている。ポアロの活躍を脳が欲しているかの如く。
何故か分からぬが同じアガサクリスティーでも「ミスマープル」ではないんだなァ。どうしてこのオッサンにここまで惹きつけるものがあるんだろうか。ホームズシリーズより好きかもしれない。
シャーロキアンに殺されそうだがポアロが高評価なのは恐らく、ポアロのジャップ警部の方がホームズのレストレード警部より好きなせいだろう。あの皮肉屋警部最高じゃないですか? 悲しいかな、名前は連呼しにくいが。
個人的に一番好きな作品が『ビッグ4』なあたり、相も変わらず脳内ミステリー界を支配しているのは明智小五郎・少年探偵団系の推理冒険物なんだなァ――この体たらくでは、シャーロキアンどころかポアロファンにも処刑されてしまいそうだ。
灰色の脳細胞を活かせる物書きならば、『アクロイド殺し』や『カーテン』のミステリーに舌を巻き、アガサクリスティーにならって素晴らしい推理物を書こうと努力するに違いない(カーテンは読み終わってから一週間くらい立ち直れなかった)。
- 作者: アガサクリスティー,Agatha Christie,羽田詩津子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2003/12/01
- メディア: 文庫
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ところがモナミ、至極哀れな黒色の脳細胞をもつ小生は、そんな技巧を学ぶという手法からは尻尾を巻いて逃げ出し、ポアロをはじめ作中の登場人物は随分とホットチョコレート(≒ココア)を美味しそうに飲むなァと単純な感想を抱いてしまうのだ!
そしてホットチョコレート/ココアがマイブームになってホットココアを見つけると、寒くなってきたことも相まってすぐ小銭を入れ自販機のボタンを連打する単細胞と化したのである。
物書きらしい感想も抱いた。
ヘイスティングズの持つ物書きの才能が欲しい。
シェパード先生でもいいから。
オリヴァ夫人は……別に……
※ ※
物書きの風下にもおけない雑魚ながらも、無謀にも文学フリマ東京に同志(若しくは犠牲者)を募って出店することになった。
今回のブースは「エ―57」。
二階中央らへん。
さァ買い手は集まるのか!?
その前に売り子は集まるのか!?