北の国まで三千里
この酷暑たるや。
アァァ溶けていく(‘、3_ヽ)_
※ ※
日頃の疲れを癒すのならば、やはり北欧これに尽きる。
故に何をトチ狂ったか雀の涙ほどの財をなげうって、ヘルシンキ行きのチケットを買ってしまったが最後、あとはするりするりと北の国へと三千里。
するりするりと(出国・入国手続そして10時間の空の旅)。
ヘルシンキ・ヴァンター空港に早朝の到着。
――となると、何をすべきか悩みに悩む。
平日だろうと休日だろうと、はやくて9~10時台にならないと店も観光名所もやっていないのがフィンランド。故に朝の6時頃ヘルシンキ市内に放り出されたところで、文字通り右往左往するしか道はない。
それでもヘルシンキの街を右往左往しているだけで楽しいに違いない、現に数年前はそうだったじゃあないかとぶらり歩いてみるが、
――ぬわぁ暑ッ!
直射日光と吹き出ある汗に四苦八苦する始末。
知人からは夏に北欧とは避暑にでもいくのかいと、言われていた。
私もその気でいたがしかし、それは大いなる間違いであり、北欧といえど夏は暑いのだ。何たる大発見!
くわえて夏のフィンランドは白夜。お天道様が照り付けなさる時間は日本の比ではない。早朝であっても深夜であっても暑さからは逃れられない。
唯一日本と違うのは湿気がそこまでないことぐらいか……それもうだる暑さの前では気休めにしかならない。
「日本にいたらもっと暑かったぞ」と自分に言い聞かせ、とりあえずはヘルシンキ市内で恐らく一番早い時間に開店するであろう「カフェ・ウルスラ(Café Ursula)」へ。
10時間飛行機に拘束されへとへとの人間に、歩いている途中も容赦なく日光は襲い掛かる。
ヘルシンキ南部の公園を抜け、ようやく到着。
折角だからシナモンロールいっちゃうかぁ!? とアドレナリンを煮えたぎらせながらトレーに放り込み、メニューへと視線を向ける。
おおっと、アイスコーヒーとかそういう類がないのか。
汗だくになりながらホットコーヒーをのどに流し込み、火照った体を熱を以て落ち着けてから、頃合いを見計らって市内中心部へ散策に出かけることになった。
人を駄目にする兵器再び。ここも店内なので寝ながら海を眺めてコーヒーを飲める。
個人的には、やはりこの「カフェ・ウルスラ」で時間調整をしてヘルシンキ市内へ向かうのが一番のルートではないだろうかと思いますなぁ。このカフェがある公園を抜けるとトラムの駅があるので、そこからトラムを使って街を目指すもよし。体力があるならぶらぶらと歩いて向かうのもよし。映画で有名な「かもめ食堂」もこの近く。
※ヘルシンキ市内はトラム・地下鉄・バスが主な交通手段となるが、これらは一枚のチケットで乗車可能。ヘルシンキ駅や大型停留所にチケット販売機があるので、そこでチケットを買う(範囲はヘルシンキ市内ならA・Bで十分。何故かコインはOKだが札はダメ)。
チケットは発券後一時間使えるものと一日中使えるものがあるが、市内観光なら確実に一日乗車券の方を買うべきではないかと思いますです。疲労困憊になった時やもっと行動範囲を広げたい時にあると便利すぎるので。
トラムならお馴染みヘルシンキ大聖堂のある元老院広場方面にも、
国会議事堂(エドゥスクンタ)方面にも行くことができる。
ただし、トラムの駅は度々変わっているようなので要注意。
1年前に発行された観光雑誌をもとに、お目当ての停留所名が電光掲示板に出るのを見逃すまいと凝視していたが、本来目当てのはずの場所で聞いたことのない停留所名が登場した挙句、次の停留所はいつの間にかお目当ての二個先、なんてこともあった。最新の停留所と路線はチェックしていた方がいいかもしれない。
そして何より、フィンランドの都市を楽しむときはトイレと飲み物に要注意。
自販機や無料のトイレが至る所にある日本とは訳が違うため、どこに行っても冷たい飲み物(特に非炭酸)がない、トイレがないと悶絶する。というより悶絶した。
飲み物の準備とトイレの位置確認(そして有料か否か。ヘルシンキ駅のトイレは確か1€)は必須な気がする。少なくとも気にはかけた方がよいかもしれませんな……
※ ※
折角フィンランドに来たからにはヘルシンキ観光だけでは物足りないので、リベンジのためにタンペレへ。
タンペレ行きならVR(鉄道)がおすすめだと思う。ゆったりできる。長距離バスよりは乗り心地がいい。
ただ長距離バスより値が張る。
何より音もなく発車するので、「何番線にいつ到着するか」という情報は確実に押さえておかないと、いとも簡単に置いていかれる。
(押さえていたはずが、発車数分前になっていつの間にか「やっぱり別のホームから発車します」と電光掲示板に小さく表示されている可能性があるので要注意)
タンペレでリベンジ。
ではなく
レーニン。
なにゆえリベンジかといえば、数年前に訪問した時には、まさかの改修工事中で入館できずという屈辱を味わった。折角フィンランドのタンペレまで来たというのに、見計らったかのように改修? それはないでしょう仏にも慈悲があるというものでしょうにあゝでもここルター派だったかとよくわからない思考が一瞬にして脳内をかけ巡ったのは今でも覚えている。
故にこのレーニン博物館だけは是が非でも行かなければならないのだ。
タンペレは工業都市だけあって、レーニンが亡命していた地であり、レーニンとスターリンが出会った地であり、フィンランド内戦で赤衛軍(社会主義派の軍隊)が占領していた地であるなど、社会主義や労働運動とのつながりが強い「労働者の街」。ソ連指導者・レーニンの博物館がロシア国外にあるのも頷ける歴史があった。
入ってすぐ目に飛び込んでくるのがこの「社会主義者言えるかな?」ロッカー。
君が選ぶ、君だけのソーシャリスト。
博物館ではレーニンと社会主義運動・労働運動の歴史に焦点を当てたうえで、ソ連の非人道的政策や社会主義陣営の失敗なども展示している。ようはレーニンや社会主義を賛美せず、その負の側面も照らし出す構成故に、社会主義者ではない私のような無知蒙昧でも楽しめる博物館になっているので皆さんもぜひ(?)
勿論ムーミン美術館もぜひ。
数年前と違ってリニューアルされ、とても綺麗になってましたぞい。
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西部のナーンタリやトゥルクにも行ってみたが、総じて「酷暑じゃなければ」という思いが強い。しかしムーミンワールドは夏しかやらないというこの葛藤。
現地のにょろにょろ君。
その前にスカンジナビア半島が大陸移動して日本から1、2時間でたどり着けるような位置にきてくれないだろうか。
もしくは日本が北極圏に移動するか。
そんなことを考えながら手元のネタ帳に目をやると、驚くことに白紙だった。
北の国に行けば流石にいまじねーしょんだとかいんすぴれーしょんだとかで3、4つほど小説のネタをひねり出せるだろうという淡い期待の元、旧ソ連のゴスプランもびっくりの計画を立てたがフルシチョフのスラム並みに大失敗。
これは前書きだけ書いて終了の予感が……